2012年01月21日

自社職人を抱えることの意義

 昨年12月6日に書いた記事「10年後、現場で働く人間は残っているか」で、最近の建設業界では自社職人を抱えない会社が増えている、と書きました。今日は、そのことで生じる問題点について掘り下げてみたいと思います。精神論、キレイごとを書く気はありません。どこまでも実利的な話をします。
 その前に、基本的な業界の構造について。
 ハウスメーカーや工務店、いわゆる元請会社に家づくりを頼むと、基礎工事から大工、外装、内装、水道・電気設備に至るまで、その会社の同じ職人さんが全てやっている、という誤解が案外多いものです。
 そういう私も16年前、郷里に戻り、この仕事に関わった時は、建築に関わる工事の区分け、つまりどんな工種があって、それがどのように組み上がってくるかが分かっていませんでした。
 もっとも、34歳の社会人経験を積んだ人間だったので、それまで生きてきた広告業界の構造と照らして、すぐに理解はできました。

 広告代理店=元請会社(ハウスメーカー、工務店) 
 広告制作会社、印刷所、編集所=専門工事店
 プロデューサー・ディレクター=建築士、現場監理員
 デザイナー、コピーライター、イラストレーター
 カメラマン、印刷、編集等の各専門職=基礎、木工事、屋根、水道、電気、内装等の各専門職

 というような感じでしょうか。広告業界も建築業界も基本的にオーダー・メイドという共通点があり、システム的には意外と似た業界かもしれません。蛇足ですが、最大の相違点は、広告業界は制作したものが、世に出て間もなく消え去ってしまう宿命なのし対し、建築業界は仕事の結果が何十年単位で残ることです。虚業と実業の違い、と言ってしまったら広告業界から怒られてしまうでしょうか?

 前置きが長くなってしまいました。本題に戻ります。
 建築業界におけるもっとも大きな問題は、自社職人を抱えない元請会社の乱立にある、と考えます。これは施工品質に大きく関わってきます。
 現場では多かれ少なかれ想定外の事態が発生します。そのリカバリーには当然経費が発生します。
 外注職人の場合、その手間賃はほとんど坪幾らといった数量単位で決められています。当然、余計なことに労力を使いたがりませんから、想定外のことが発生しても他人事としかとらえません。賃金を払う方も、これをやってくれたら追加で幾ら払う、といったような細かい管理は、現実問題として不可能です。したがって問題が放置されたまま現場が進行しがちになります。このような大小の問題が積み重なって住宅が完成します。良い家が出来るわけがありません。
 逆に、自社職人(大工さん)を抱えている工務店ではどうか?基本的に業者同士も顔見知りですから、「ここどうすっぺ〜」と気楽に棟梁さんに声を掛けます。そこで大工さん側にその対応のため追加で何か作業が発生しても、社員である大工さんは月給で貰ってますから、手間がかかってもその分、自動的に会社が持ってくれます。よって「わがった、こうせばいいんだな。やっといてやっからよ」と気持ちよく対応してくれます。
 現場では日々このように誰かが追加で手を加えなければならないことが発生します。その部分をカバーしてくれるのが、多くの場合、元請会社の社員職人さんたちです。
 ちなみに当社の場合。職人は、全員正社員です。月給制で社会保険等福利厚生完備です。現場で、ちょっとここはまずい、やり直し、となっても、こちらが正しい指摘をしているのであれば職人は気持ちよくやり直しします。その分のロスは会社が負担します。以前は私も、これは職人に対する甘やかしではないか、と悩んだ時期もありましたが、今は割り切ってます。それよりもそのようなミス、考え違いがおこらないよう日日、研鑽することです。また、ダメ工事を指摘するのはただでさえ嫌なものなので、監理者の精神的負担も考慮しなければなりません。やり直してもその間の賃金はちゃんと払う、ということであれば、監理者も職人に率直に言い易い。ミスが放置されることを防ぐ、大事なのはその1点です。加えて健全な人間関係の維持。マネジメントの観点からも、自社職人体制は合理的と思います。私も過去何度か、自社職人を抱えていて良かった、と心から思ったことがありました。
 話は戻って、逆に全て外注で回している会社は、この対極にあります。つまり、ミスの放置が続出、その指摘をキチンとすれば、追加手間賃の問題の発生、そこでもめれば人間関係の問題が発生します。結果、現場はギスギスし、殺伐とした空気が漂い始めます。私も、過去、そのような現場を経験しましたが、結局そのような会社と当社は水が合わないみたいで、関係は長続きしませんでした。逆に、そういう会社とばかり相性の良い工事店もあり、不思議に思って見てます。同じ考えだから気が合うのか、相当我慢しているかのどちらかでしょう。
 最後に、書き添えておきますが、本当の大手一流のハウスメーカーで、全て外注工事店を使いながら、こういった問題を相当レベルでクリアしている会社があります。建物の設計、部材開発の段階での完成度が高く、現場での不測の事態が発生し難い、外注業者会の結束が強く、現場での意志疎通が良好であるためと思います。私も、その会社からは多くを学ばせて貰い、当社にとっては長いお付き合いが続いている数少ない大手ハウスメーカーです。
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2012年01月14日

ユーロ債格下げを嘆く

 今朝のニュース、スタンダード&プアーズがユーロ債を格下げしたとのこと。
 世界は、今後マネーゲームの規制を行わないと本当にヤバイことになる、とあらためて感じました。
 投資ではなく投機、実体ではなく虚構が世界中を横行してます。
 元々、経済の必要性、安定性のため、実体経済を支えるために開発されたはずの高度な金融手法が、まったくその意図から離れ、単なる投機的金儲けの道具にされてます。嘆かわしいことです。
 以前にも書きましたが、実体経済だけを見れば、ユーロ危機はそれほど拡大しないはずです。
 問題は、20〜30年前が実体マネーが90%に対して虚構マネー10%だった世界経済が、ここ数年で逆転、実体マネー10%に対し、90%まで膨れ上がった莫大な虚構マネーがやれデリバティヴだやれレバレッジだ、と恥知らずな大暴れをしている点です。
 真に知的な識者集団は、市場に冷静に対応するよう言い聞かせているのですが、この暴力の前では為す術もない状況です。
 そんなにお金を儲けてどうしようというのでしょう。何も生産しない空しいゼロ・サム・ゲームの勝者になって何がうれしいのでしょう?その結果、世界が大混乱に陥り、多くの人が不幸になっても、何の良心の呵責もないのでしょうか?
 健全な世界を築くためには、これ以上金融工学の悪用を許してはいけません。規制をかける方法は必ずあるはずです。
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2012年01月11日

震災から10ヶ月が過ぎて

 震災からちょうど10ヶ月が過ぎました。
 今日は大船渡の現場に行ってきました。新築が2現場進行中です。
 45号線を走りましたが、天気も良く、遠野に比べて気温も高く、別世界でした。寒いには寒いのでしょうが、遠野の痛いような寒さに比べれば、現場にいてもはるかに楽です。
 海もとても穏やかでした。この海が、多くのものを呑み込んで、奪い去ったなんて、映像で見ても、目の前で瓦礫を見ても、今だ実感できません。
 岩手県内の土木・建築業界はたいへん忙しい状況です。宮城県は、その数倍忙しいようです。震災、津波で命を奪われた方々のことを思うと複雑な心境です。皆さんから忙しいでしょう、たいへんでしょう、と声をかけられるのですが、浮かない顔でうなずくしかありません。
 実際、心は晴れません。
 業界内からは嘆かわしい話も聴こえてきます。複数の関係者が同じことを言っているので間違いないでしょう。
 9月以降、郡山、埼玉は実際に出向いて話を聴きましたし、北関東の状況は、信頼できる筋からの話ですから事実だと思うので書きます。
 屋根の修理工事をとんでもない高値をふっかけてやっている工事店が続出している、という話です。
 お客様の中から、もう2度と瓦なんか葺かない、という声が出ている、とか、瓦工事業界自体が、とんでもない業界と言われている、など聴いていて怒りが込み上げてきました。
 「そんなことをしたら、将来自分の首を絞めることになるでしょ」と私が言えば、話をしてくれた方々は「そういうことをする業者は、この1〜2年でガッポリ稼いで、あとは廃業する気でしょう」と口を揃えて言ってました。各地でそれぞれ聞いたのですが、まったく交流のない方々3人が3人とも全く同じことを言ってました。これは明らかに噂話の域を超えてます。
 ここ数年の不況は、我々工事業者にとってあまりに辛い試練でした。ほとんどの工事会社は売上は15年前に比べれば、5〜7割減ってます。つまり良かった頃の半分から僅か3割くらいしか売上がなくなっている会社がほとんどなのです。加えて粗利率も低下しているのですから、どれだけ経営が苦しかったかは容易に想像できると思います。そんな中で、多くの経営者の心がすさんできたのも正直言って理解できます。今、そのことに対するまるでアテツケのように、高値ふっかけが横行しているように私には見えます。
 どれだけ、仕事を依頼されても、当社は当社の職人14名で精一杯やってこなせる量が限界です。私は、自分たちが請けた仕事を安易に外注するような会社にはしたくありません。見積もりも適正金額を出します。
 昨年の6月に書いたこのブログの記事『これからの「正義」の話をします』で表明した考えを私は変えておりません。
 
posted by walker at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 東日本大震災

2012年01月07日

穏やかな年始です

 2012年がスタートしました。
 と、書き出して、いきなり昨年の話をします。最初に断っておきますが、ほとんどどうでもいい話なので、忙しい皆様におかれましては読まない方が良いと思います。
 年末の日曜に髪を切った直後に発熱。翌朝の会社の朝礼と朝ミーティング後にダウン。早くも戦線離脱。年末の最低限やって置かなければならないことは済んでいたのでまだ良かったのですが、医者から貰った薬を全て飲み終えても微熱が引かず、31日に当番医のN医院に行って「微熱が引かない、結核ではないですか」「くしゃみが止らないところを見ると、風邪ではなく何かのアレルギーでは?」とやったものだから(いちばん医者から嫌われるタイプ)、案の定「君ねえ〜」とN医師にたしなめられ、仕舞いに「長く薬を飲み続けているので、胃腸薬も・・・」と口を滑らせてしまい、「まっそれは今回処方する薬を飲んでみてから決めまショ」と話をシャットダウンされ、診療室を後にしました。
 その後も微熱が引いたり出たりを繰り返し、ただ体調は少しづつ良くなり、正月2日から馴染みの温泉民宿で2泊3日の湯治。実によく眠れました。この宿の風呂は、湯に浸かると湯船の縁をかけ流しのお湯がなめらかに溢れていきます。いつも湯の中で存分に身体を伸ばし、ゆっくりと何度も首を回して全身をほぐしていきます。
 部屋に戻り、花輪莞爾の「悪夢百一夜」。とんでもなく分厚い本ですが、この本の正しい読み方(読む体勢といった方が合ってる)は、まず、畳の上にマットと布団を敷き、枕を布団の上でなく畳の上に置いて、布団にうつぶせになって、顎を枕にのせます(分かります?)。本は直接畳の上に置くと、目と本の距離がちょうど良くなります。この時、両手の掌を顎の下に敷き、本との距離の微調整をします。すっと伸びた背骨が若干反り返りますが、まずまず楽な体勢と言えるでしょう。家ではベッドなのでこの体勢が取れません。
 そうしてしばらく至福の時を味わいました。花輪莞爾はやはり天才です。
 休みの最終日にN医院の薬も飲み尽くしました。体調は、と言うとちょっと?気味。
 昨日が仕事始めて、年始の安全祈願、年始まわりをしてる間に、やっと普通の人間に戻れました。夜はいつものヨガ。
 おかげさまで今日は快調です。発熱の後って全身の体液が入れ替わった様な気がして、不思議な爽快感があります。
 以上、どうでも良い話を終わります。最後まで読んでくれた方にはたいへん申し訳なく思います。今年もよろしくお願いいたします。
posted by walker at 11:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記